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男の長期育休(後編)

 ~「育休パパが、いい夫」なのか?

 


シリーズブログ「男の長期育休」ですが、前篇では取得する本人の視点から、
中篇では、職場環境の観点から、男性の長期育休取得について考えてきました。

第三回になる後篇では、

「夫の長期育休取得を考える際、家庭として考慮すべき検討要素

を整理したいと思います。

「考慮すべき検討要素」を整理する理由は、簡単です。
夫が長期育休を取るかどうかは、

各世帯の個別具体的な事情・状況によって変わるもの、だからです。

 

 

私の夫が育児休業を取得する話を聞いた方から多く頂いた言葉に
「いい旦那さんだね」「優しい旦那さんだね」というものがあります。

もちろん、私の夫が「いい旦那さん」であり「優しい旦那さん」なのは間違いないのですが
育休を取りたくても取れない「いい旦那さん」もいるし、
夫婦で相談・合意して育休を取らないことにした「優しい旦那さん」もいるはずです。

育休取得をする夫が「良い旦那さん」「優しい旦那さん」なのではなく、

お互いのキャリアや価値観を尊重しながら対話できるのが

「良い夫婦」「お互いを思いやれる夫婦」ではないでしょうか。

 

各家庭の「最適解」を議論する手掛かりとして、参考になれば幸いです。

 

【夫の育休取得にあたり、家庭として考慮すべき検討要素】

 

■ 夫婦それぞれのキャリア志向

 :夫婦それぞれが、どの程度キャリアアップを志向しているかどうかは

  非常に重要な検討要素です。
  夫婦ともに、キャリア形成を強く志向している場合などは、
  より具体的かつ戦略的に、他の要素を検討する必要が出てきます。

■ 夫婦それぞれの職場環境、及びキャリア上のイベント状況

 

 :職場環境とは、中篇で書いたような要素になってきます。
  大変残念なことですが、現在の日本の状況では、
  「育休を取得したくてもできない」場合もあると思います。
 
  また、昇進・昇格や異動といったキャリア上のイベントが発生した場合、
  それも育休取得の有無(可否)や、取得のタイミング・期間に影響してきます。

■ 夫婦の育児観・家庭観

 

 :これは、上2項目のキャリア観連の検討要素と異なり、各自の考え方の理解だけでなく
 「夫婦共通の方針」のすり合わせが非常に重要です。

 研修参加者などから耳にした「育児観のすれ違い」のケースでは、
 夫側の「母親は~~すべき」「母親は~~であるべき」という家庭観・育児観に対し
 当の母親である妻はまったく異なる考え方で平行線・・・という事も多いようです。

 「こういう子育てがしたい」であれば、どういう分担をするか?という話ができますが
 「母親はこうであるべき」という要望の提示は、対応策が限られます。
 そういったケースでは、妻側が納得できないのであれば
 時間がかかっても、じっくりとねばりづよく相談・意見交換する必要が出てきます。

 

 この要素は、フルタイム復帰のタイミングや、

 転勤発生時の帯同/単身赴任の判断にも、大きく影響してきます。
  
■ 夫婦それぞれの雇用状況・収入の見通し

 :これは、「夫の方が稼いでいるから育休を取らない」という短視眼的な話ではなく
 中~長期的に見た世帯収入の最大化という投資的判断になります。

 つまり、現時点での収入差ではなく、妻の生涯年収、

 ひいては世帯として得られる将来的な総所得金額で考えるべきです。
 
 例えば、妻が1年近く休業した場合、復職できる可能性が不透明・・・

 といったケースでは、仮に妻の所得レベルが夫よりずっと低かったとしても、

 夫が育休を取得する価値は充分にあるかもしれません。

■ 新生児期の育児サポート環境

 :運用レベルの問題として、新生児期の育児サポート環境は重要な検討要素です。
  両親のサポートの有無、公的サービスの利用可否(有無)などによっては
  妻が専業主婦であっても、産褥期を中心とした中~長期の男性の育休取得が

  求められるケースは少なくありません。

■ 二人目・三人目の計画(見通し)

 :今後の出産計画として、二人目・三人目まで考えており、
  かつ妻がキャリア形成をペースダウンしたくない場合・・・・または、

  年齢的な問題から二人目・三人目出産まで間隔を空ける余裕が無い場合は、
  出産の都度、どの位の期間の育休を取得するかを、よく考える必要があります。

  会社に制度があるからと、取得限度いっぱいに育休を取っていては、
  「3人産んたら、30代のうち5年間は育休で会社にいなかった」
  「2人目妊娠を急いだ結果、育休明け後に即・産休になった」ということになりかねません。

  「それでいい」という考え方や、「それで大丈夫な社会になるべき」という議論もありますが
  現状の雇用慣行(賃金制度含む)のなかでは、一定の課題をはらんでいるのも事実です。


どのような形で夫婦で育休を取得し(あるいは取得せず)、育児を分担するかには
正解はありません。あるのは各家庭の「個別具体的な最適解」だけです。
 
その、各家庭の最適解を考える上での検討要素を整理すると、
大きくは、以上のような要素に集約されるのではと思います。

 

育休は妻が取るものだから・・・と相談さえない、というのはもちろん問題ですが、
夫も育休を取らねば!取るべき!という同調圧力が生まれては、また別の問題が生じます。

各自・各家庭でフラットに意見交換でき、
最適解に応じて育休取得ができる社会になることが理想と思います。