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男の長期育休(前篇)

 ~取得宣言前の8つの内的ハードル

 
今回、私の出産にあたり夫が6カ月の育児休職を取得しますが、
私の夫は、自分から「育休取りたい!」と言ったわけでは、ありません。
 
最初相談した時は、「え?僕が?育休?何カ月も・・?何で??」と驚いていました。
(夫は人事総務関係の仕事ではなく、大手企業勤務でもありません。
 現業部門のシステムエンジニアです。)
 
そんな夫と、育休取得に向けた相談を続ける中で、
男性が長期育休を決心するまでの「内的ハードル」が見えてきましたので、
ある程度、一般化した形でまとめてみたいと思います。
 
※本記事は、前提として「会社員の共働き夫婦」、
 「夫は頑固な亭主関白気質(相談・対話不可)では、ない」場合を想定しています。

~~~~~~~~~~~~
■STEP1 「うちの会社にそんな制度あるのかな・・・?」
 
男性も育児休業を取得できることを「知らない」方が多いようです。
 
夫が育休を取ることを伝えた知人・友人からの反応でも
「そんな制度あるんだ」「進んだ会社だね」というものが多かったです。
 
『法律で、育休は男性にも女性と同等の権利が認められているよ』
ということで、このステップは 「ふぅん、そうなんだ、へぇ」 で、終わりです。
 

■STEP2 「僕の有給、たくさん残ってるよ?」
       「両親とか、行政のサポートのやりくりでなんとかならない?」
 
1~2週間程度の有給消化という『隠れ育休』が発生するのは、
このステップで終わってしまうケースが多いからと思います。
 
我が家の場合も、夫は1か月程度は自身の有給で対応し、
以降は私がSOHOという事もあり、スポットのサポートがあれば
なんとかやりくりできるのでは?と考えていました。
 
産褥期対応の育休取得であれば、そういったやり方も可能でしょうが
会社員の妻の復職を目的にした場合では、
夫の有給取得とスポットのサポートでは、無理が出てきます。
 
(夫が育休を取らないなら、保育園に入れるという選択になります)
 

■STEP3 「なんで、そんなに早く仕事を再開したいの?」
          (なんで、僕が育休まで取らなくちゃいけないの?)

ここが一番の難所になります。
 
夫が長期の育休を取るという形で妻の仕事を応援することに
いったいどんなメリットがあるのか、共通認識を作る大事なステップです。
 
それは、単に妻のキャリアアップや、やりがいという話ではありません。
 
ひとことで言えば、「世帯年収の増加」ですが、具体的には
 ・ 教育資金や老後資金、レジャー費や住居費が潤沢になる
 ・ 夫の自由になるお金(おこづかい)も増える
 ・ 夫の病気・事故に対するリスク許容度が高まる
 ・ 夫の会社の倒産や業績低迷に伴う
    失職・収入減に対するリスク許容度が高まる
 ・ 夫の転職・独立・社会人留学などの人生の選択肢の幅が広がる
 
・・・など、多岐にわたります。ここに気付いてもらえれば、
夫の育休が家族全体にとって良い選択だという結論に、自然に至ります。
 

ただしここは、説得側の妻の意識が問われる場面でもあります
「ずっと仕事を続ける」という気持ち自体があやふやでは、お話になりません。

現状維持ではないキャリアを描き、自分も家計(収入)に対して責任を持ち、
パートナーとして夫を支え、応援していきたいという気持ちがなければ、
先に書いた「家族のためにベストの選択」と感じてもらうのは難しいでしょう。
 
このステップは、夫が育休を取得しない場合でも、
妻の職場復帰後の家事・育児の分担にも影響してきます。
 
そのため、育休の有無に関わらず、ぜひ対話しておきたい内容です。
 
 
■STEP4 「僕が休んでる間、お金のことどうするの?」
 
今年4月の雇用保険法の改正で、 育児休業給付金が
最初の半年については「休業前の月額給与の67%」になりました。
 
休業中は、天引きだった社会保険料・年金・所得税も免除になりますので、
ざっと計算すると手取り額の8~9割の給付になるのではと思います。
 
何事も、お金の問題ぬきには考えられません。
今回の制度改定により、このステップクリアは以前よりは
ずいぶん容易になったのではないかと思います。
 
(とはいえ、妻が復職すれば、その収入である程度生活は回りますし、
 妻のキャリアを支援することで、将来に得られる収入増加分を考えれば
 ごく一時的な収入ダウンは、許容範囲ではないでしょうか。
 
 給付額(率)が40%に戻ったとしても、STEP3で対話できていれば
 このSTEP4も、クリアできるのではないかと思います。)

 
余談ですが、給付金は会社ではなく「雇用保険から出る」ということも
心理的ハードルをクリアするのに役立つ情報のようです。

 ※ 上記の給付金の増額は、2014年4月現在の情報です
 
 

ステップ1~4は、夫に長期の育児休業を取得してほしい理由を説明し、
取得しない理由を取り除いていく段階でした。
ここからは、取得したいという本人の気持ちを「整えて」いく段階です。

 

 

■STEP5 (他の人は、どう思うのかなぁ・・・)
 
他の人・・・・特に男性の同僚・上司が、どう思うか?
また、業務面で迷惑をかけて、顰蹙をかうのではないか・・・?

これは会社の風土や、本人(夫)の性格もあるので
一概にこういうロジックで対話を、ということはできません
 
ただ一つ言えるのは、「気持ちが整うには時間が必要」ということで、
結論を急いで夫を問い詰めても良いことはありません。
 
以下のステップとからめつつ、気持ちが整うのを待ちましょう
 
 
また、業務面での調整については、男性の育休取得の場合
女性よりも「繁忙期を避ける」という微調整が行いやすいので、
取得のタイミングについては柔軟に考えることも重要になります。
 
(これについては、中篇「育休取得に理想的な職場環境」でも詳しく述べたいと思います)
 
 
■STEP6 (僕のキャリア、大丈夫かなぁ・・・・)
 
これはステップ5と重なる部分もありますが
本質的には、本人が自分のキャリアをどうしたいか、という話です。
 
自分が、どんな専門性・年収・ポジション・ワークスタイルを望むか?
という軸が無いと、「なんとなく不安」な気持ちが残ります。
 
我が家の場合、システムエンジニアの夫は
プロフェッショナルとして市場価値を高めたいというエキスパート志向で、
組織内でのポジションアップという意向はさほど強くないため
このステップは、大きく問題にならなかったように思います。
 
STEP3の段階で、夫婦それぞれのキャリアビジョンについて
対話を深めていると、スムーズかもしれませんね。
 

■STEP7 (毎日家にいるって、どんな生活なんだろう・・・?)
 
人は誰しも、知らない環境に飛び込むのは不安なものです。
STEP5と同じで、ここをロジカルに問い詰めたり感情的に責めても
まったく良いことはありません。
 
我が家の場合は、

 「社会人になってから、ず~っとがんばって働いてきてるんだし
  ちょっとくらいお休みしてみるのも良い経験じゃない?」
 
 「無職にならないで半年休むなんて、一生で数回しかできないよー?」
 
と、本人の興味をそそるようにしていました(笑)
 

■STEP8 (育休かぁ・・・わくわくしないなぁ・・・・)
 
ステップ7だけだと弱いので、お楽しみの「わくわく」があるとベストです。
 
もちろん、「今しかない子供との時間」で充分!という考えもありますが
それは子育ての大変さとセットなので、おまけのお楽しみも考えましょう。
 
我が家の場合、私が比較的時間が自由になるため、
土日や平日夜などに、ある程度、夫が自分の時間を持てるよう約束しました。
 
スキルアップのためのセミナー受講や、体のメンテナンスのための運動、
一生続けられる趣味を作る時間など、育休期間中に
将来に向けた新しいチャレンジの機会が持てればいいね、と話しています。
 
(本当は、妻の育休中にも、夫からこういう心遣いがあると嬉しいですよね)
 

さて、ここまでいかがだったでしょうか?

男性の長期育休、取得宣言の前の内的ハードルは案外多いのです。
 
なかなか大変なステップではありますが、これをクリアしていけば、
自然と男性の育休取得の気持ちも高まるのでは、と思います。

 
ちなみに、私の夫の場合、STEP4をクリアするまでに3~4カ月程度、
STEP8まで進んで完全に気持ちが整うまでに半年ほどかかりました。
 
我が家の場合、そろそろ子供を・・・と考えた時点で相談を始めたため、
夫の気持ちが整うのを待ちながら、ゆっくりと話し合う事ができたのです。
 
妊娠判明後のタイムリミットのある状態で相談を始めたのでは、
ゆっくりと心穏やかに話を進めることは、なかなか難しかったと思います。
(しかも、その時期はつわりで家庭内もぐちゃぐちゃでした!)
 
家族の一生の計画として、早め早めの意見交換が理想です。

 
「男の長期育休」中篇では、宣言後、実際に育休を取得しやすい
職場について考えてみたいと思います。