: 「空気」と「世間」 (鴻上尚史)
「空気を読む」という言葉の背景にある、日本の社会文化をひもとく本。
日本における、企業と働き手の関係性の不可解さ―
「滅私奉公」や「同調圧力」、働き手の過大な会社への依存・甘え・・・
そういった「空気」が、なぜ組織文化として圧倒的な力を持っているのか。
また、PTAや町内会等の自治会で起きる不合理な議論、
集団心理や非建設的に見える意思決定がなぜ生まれるのか。
そういったものの背景にあるメカニズムを、
「世間」というキーワードからすっきりと解説してくれる良書です。
鴻上尚史さんは、TV・舞台で活躍する演出家ではありますが、本書では
日本の社会文化に関する学術的な先行研究を咀嚼して説明してくれており、
納得感・安心感もありながら、非常に分かりやすい本となっています。
村落の経済共同体として存在した「世間」が、近代以降、
「会社」という経済共同体に移管・移植されたという論旨なのですが、
では、現代を生きる我々は、その「空気」と「世間」に対して
どのように処すべきかという提言が非常に的確です。
鴻上さんが最後に述べられている
「複数の”世間”に所属し、その連帯と相互扶助と安心を得ながら、
西欧的”個人”としてほんのちょっとだけ強くなって、
”社会”との接点を持つことを始めるといいと思う」
という主張には、非常に共感します。
また、自分の所属する第二・第三の”世間”を探すうえで
インターネット(や、今ならSNS)が役に立つと言うのも、良い指摘だと思います。
ソーシャル・ネットワーク・システムは、日本においては
”自分の所属する世間を選ぶ力”になりうるということ。
私としては、上記の”世間”と”社会”に合わせて、
「家族」の機能の再解釈・再構築と、その拡大も大切だと思いますが
それはまた、別の論考になると思います。
■ 「空気」と「世間」(鴻上尚史)
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