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マタニティ・ハラスメントを考える

  ~権利と非常識の境界

昨今「マタニティ・ハラスメント」という言葉が話題ですが、
これに関して権利と非常識の境界が非常に難しいと感じています。

(安藤美姫さんの出産に関連したバラエティ番組や
 大衆誌の取材姿勢は、ハラスメントなどという生やさしい言葉ではくくれない

 悪質な人権侵害なので、ここでは触れません)

先日、テレビ東京のワールド・ビジネス・サテライトで
マタニティハラスメントについて5分ほどの特集がありましたが
その冒頭で紹介された”マタニティハラスメント被害者”は

 ・新卒で入社1年目に妊娠
 ・営業部門に異動になり、流産
 ・3年目に再度妊娠し、産休、育休を取得
 ・育休明けを前に第二子を妊娠(第1子は1歳児)
 ・面談で退職した方がいいのではと言われた
  ※現在、当該女性は27歳

このケース、人事の方であれば、非常に頭を悩ませるところではないでしょうか。

妊娠発覚後の営業への部署異動や、
面談での退職勧告は、明らかなマタニティハラスメントです。

一方で、勤務実績を総合的に考えると、いまの企業の雇用慣行のなかでは、

能力開発も十分でなく、育休明けの貢献も期待できない状態というのも事実です。

現在の雇用慣行の前提では、新卒正社員雇用は
「初期の育成コストを負担し、長期的に回収する」
モデルであるため、働き手の信義違反という面もゼロではありません。

もちろん、妊娠は喜びごとではありますが
企業と働き手の信頼をつないでいくためには、
双方の信頼に基づく「雇用の前提」を尊重する姿勢も
必要になってくるように思います。
(そのために、働き手に対する健全な労使関係の啓発が非常に重要です)

一方で、この「姿勢」を論じるとき、
「権利」と「非常識」の境界が非常にあいまいになります。

40代・50代の先輩女性の話を聞くと、就職時に
「20代の妊娠は禁止」といった話を上司にされたなど
今聞くと驚きの”当時の常識”を聞くことがあります。

入社直後の妊娠はいかがなものか、という現在の論調も
20年後には驚きの”当時の常識”になっているのかもしれません

自由なタイミングで子供を産み、育める社会・・・
そういった社会にしていくためには、現在の雇用モデルである
新卒一括採用と、集団的に教育する育成手法そのものも
大きく変わっていかなくてはなりません。

何歳からでも、キャリア構築をスタートできる社会。
そういった社会になれば、若年での妊娠・出産が
キャリアの足かせにならない世の中になるはずです。

単純に「妊娠・出産は女性の権利である」
「それを喜ばない雇用主は悪である」ということでは
権利闘争が始まり、企業と働き手の信頼はズタズタになります。

企業が憂いなく、素直に社員の妊娠を喜べる雇用の在り方
今後、時間をかけて社会全体で作っていけたらと思います。