日本の人事部 HRカンファレンス2017春 トークセッション内容全書き起こし(3/4)
いつまでも残業できると思うなよ~働き方改革から始まる人生ポートフォリオ
前原 : 川島さん、独立されてから切れ味が鋭くなられましたね(笑) 先ほど『終わった人』というお話がありましたが、私は少し違ったアプローチで説明しています。先ほどお伝えした時間の使い方・時間配分ですが、人生全体でグラフにしたらこうなりませんか?という話を管理職向けにしています。分散投資の効いていない、家庭は最低限というグラフです(図3)。

▲図3 企業戦士型のライフ・ポートフォリオ変動モデル(例) ※資料より抜粋
定年を機に仕事がなくなった時、妻と何を会話しよう?となる。子供を飲みに誘っても「親父とは飲みに行きたくないよ。」とか、地域活動でも「元○○の部長」と言っても、だから?という話になってしまう。
このグラフを見た時に、「俺の人生これでいいのかな?」「この働き方でいいのかな?」という部分が働き方改革の一つの原動力になるし、なるべきだと思うんです。
「自分の人生」を考えれば、働き方改革がはじまる
前原 : 川島さんは先ほど自己紹介でおっしゃっていたように、バブル期の総合商社に入社されて、そのまま行けばこのグラフのような「企業戦士まっしぐら」という路線だったと思うのですが?
川島 : こういう人は沢山いたし、僕も最初はほとんど仕事だけでしたね。
前原 : そこから、ぐっと踏みとどまって「三本柱の人生」を目指されたきっかけは?言わば“狭き門” “いばらの道”ですよね。
川島 : 敢えて言えば、子供が生まれたことです。父親として子供が生まれたらかわいいから一緒に過ごしたい。それだけです。 私の妻は、総合職でフルタイム勤務でした。当時はまだ珍しかったと思います。出産しても仕事を続けたいと言うので、 「じゃあ俺が家のことをやらなきゃいけないな」と思いました。夫としての当然の”責務”であり、父親としての当然の”欲と権利“です。私にしてみれば、やらない方が不思議。なぜやらないの?その理由を逆に聞きたいです。
前原 : みなさん我慢してきたんでしょうね。「家庭に時間を使いたいなんて言っちゃいけない」というように。この企業戦士型のグラフを部長や課長さん、多くは男性の管理職にお見せすると、「会社に俺の人生返してほしいと言いたい」「65歳を過ぎて断崖絶壁の後やることがないから死んじゃうな」という自虐的な声も出てきます。
川島 : そうでしょうね。我々50歳過ぎの男性はある意味かわいそうなんです。当時、「子供を迎えに行くから早く帰ります。」「熱を出したから休みます。」「子供を送っていくので早朝会議に出られません。」なんて言おうものなら、「ばかやろう!男は仕事だろ?そんなの妻にやらせろ!」「なに?妻が働いてるだって?お前は甲斐性ないな。」と言われてしまいましたからね。
世の中の常識が180度変わってしまって、管理職の方は気の毒な世代でもあるんです。今日の来場者の中にも中高年の男性がいらっしゃるから、それは否定してはいけないなと思っています。そういう時代だったんです。
仕方ないんですが、その人だって今からでも、働き方・生き方は変えられます。ましてや、今の若い人たちはもっと自分のやりたいこと・やるべきことをやって良いのではないか、そうした方が仕事の生産性が高まって仕事のアウトプットが増えると思うんです。
前原 : そうですよね。ワーキングマザーの方が時間当たり生産性が高いというのはよく言われますよね。
川島 : すごいですよ!世界で一番生産性が高いのは夕方4時~5時半までのワーキングマザーと言われていますからね。すごい形相で1秒刻みで仕事してますよ(笑)とにかく、ワーキングマザーの生産性はすごいです。
前原 : 一方で、これからの時代は次のグラフのようなイクメン世代も増えてきますよね(図4)。
川島 : そうですね。そしてもっと重要なのが、100年ライフ―『LIFE SHIFT』(※1)という話です。先日も、「男の100年ライフ」というイベントを開催しました。あえておじさんの聖地・新橋で開催したんですが、超満員。あなたの人生100年だよ?70年じゃないんだよ?大丈夫?老後に30~40年あるんだよ?そういう気持ちで考えると、余計「人生のポートフォリオ」を真剣に考えていくべきなんです。

▲ 図4 共働き世代のイクメン型のライフ・ポートフォリオ
変動モデル(例) ※資料より抜粋
前原 : 現役時代にしっかり家庭に先行投資・分散投資しておかないと、仕事が終わった後が恐ろしいですよね。
川島 : やはり子育てをやっておくと妻との関係も良好ですし、子供がいると地域に出やすいので「子育ては地域活動のパスポート」という言い方もしますが、子供会など入りやすいし、ネットワークもできますよね。20代、30代の男性にはそこをしっかりお伝えしたいです。子育てをしている間に、なるべく早く地域にも出て、ライフとソーシャルに入る、ということが重要だと思います。
※2 『LIFE SHIFT~100年時代の人生戦略』
著者:リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット 出版社:東洋経済新報社